動物園
岩波新書に「現代〈死語〉ノート」という新書本があって読んだことがある。
小林信彦氏の著書である。
1956年から1976年までの、今となっては死語となった言葉を集め解説している。
この本の第一刷が1979年だから、もうずいぶんムカシの書籍ではある。
おそらく当時の流行語も今の時代ではすでに死語になっている。
私事だが僕は1953年の生まれで、1960年代の「あたり前田のクラッカー」や「ホンコンフラワー」「バカンス」「ハッスル」「ガチョーン」「丈夫で長持ち」「シェー」などいくつかの流行語を知っているし、リアルタイムで使った。
そして、今はもう使わない。
時々受けねらいで言うことがあるが失笑される。
言葉は死ぬのだ。
死語のことを考えながら、動物園という文字を眺めていたら「女の園(その)」という言葉を思い出した。
どうも「園」の訓読みに反応したらしい。
「男の園」は聞いたことがない。
それを想像すると男の僕は気色悪い。
女性も気持ち悪いと感じるのだろうか。
気にはなる。
で、女の園 は今も使われるのだろうか。
「ジーパン」や「ジャンパー」みたいに、あるいは「アベック」や「カップル」みたいに懐かしく、昭和な、オヤジくさいにおいがする。
もう結構な死語になったに違いない。
パソコン辞書を引いてみよう。
女の園
読み方:おんなのその
女性ばかり多くいる場所、女性がいるという点において特徴づけられる場所を指す語。
男性がいわゆるハーレム状態になれる場所といった意味合いで言及される場合が多い。
[実用日本語表現辞典]
死語とは書かれていないがちょっと怪しいな。
そもそも「園」とは何なのだろう。
えんゑん【園】漢字
① 果樹野菜草花などを栽培する耕地。「園芸」「菜園」「田園」「果樹園」
② 広い庭。その。また,施設。「園丁」「公園」「庭園」「霊園」「植物園」
③ 人の楽しんで集まる所。「園長」「学園」「楽園」「動物園」「幼稚園」
[Mac アプリケーション辞書]
なんと、動物園と幼稚園が③ に同類として分類されている。
動物園・・・人が楽しんで集まる動物園という解釈かな。
幼稚園・・・人が楽しんで集まる幼児の園・・・これでいいんだろうか・・・。
この場合、幼児が楽しんで集まる園と言った方が自然な気がする。
じゃあ、同じように動物園は「動物が楽しんで集まる園」といえるのだろうか。
ちょっと混乱してきた。
動物園には家族連れや幼稚園児がやってくる。あるいは保育園児がやってくる。
いつも子供たちがいっぱいなので、親や大人は「人間の子供」という動物を否応なく見ることになる。
その隙間から人間以外の動物の佇まいを覗く。
園と園が入り交じり混在する場所。
大人がその場所を楽しんでいる。
あんがい動物園は、大人が楽しんで集まるところなのかもしれないな。
そして「動物園」は死語にならない。
(日下部一司)
[写真収蔵]
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