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岡村絵理 REMsleep リトグラフ 395×273mm 2014
「プリメ美術館」は版画工房B302が所有するWeb上美術館である。
建造物が存在しないので、いわば空想美術館と呼べるかもしれない。
空想美術館といえば、アンドレ・マルローの「空想美術館」を思い出す。これはマルローが、1947年に出版した芸術論『東西美術論(原題:芸術の心理)』の第1巻で提示した概念であり、あらゆる芸術作品の図版を共有することで、現実の美術館には不可能な架空展示や編集などを通して芸術作品の新たな解釈を促す美術館の新たな概念をさしている。しかし、プリメ美術館はこの意味での「空想美術館」ではない。
ヴァルター・ベンヤミンが『複製技術時代の芸術』で言及した「アウラ」は、オリジナル作品から失われた「いま」「ここ」にのみ存在する「オーラ」の喪失と、その時代の可能性を見いだそうとするものであった。
ベンヤミンの生きた1930年代と現在では「複製」の概念や「オーラ」の意味合いも少なからず違ったとらえ方がされるようになったのではなかろうか。
10枚20枚、100枚1000枚、というような複製イメージではなく、Web上では一瞬で100億人の人に閲覧される可能性をはらんでいる。
版画というメディアは「複数性」と背中合わせに生まれたが、Web情報は「複数性」と呼ぶには似合わない膨大な数と存在の希薄さ、匿名の不気味さもはらんでいる。
プリメ美術館はそうした時代にアナログとしての版画と、デジタル情報時代の美術について考える場所として ささやかに開設された。
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